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ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ著『スペンド・シフト』(プレジデント社)
どん底から再生する都市の中のストーリーが、高齢社会で過疎化に悩む地方の参考になる部分もありそうだったので、シェアメモです。
かい摘みます。
デトロイトのどん底ぐあい
長期の衰退傾向にあったデトロイトは、2007年終わりからの大不況によるダメ押しに遭っていた。 (p.43)
・住宅価格の中央値は2005年の60,000ドルの低水準から、さらに8,000ドルを割り込む。
・8万人収容のシルバードームの売却価格が583,000ドル。
・失業率は職探しを諦めた人を除いても28.9%と推計。
・ピーク時180万人だった人口は90万人を割り込む。
フランス風カフェ「ル・プチ・ザンク」
(前略)デトロイト中心街(中略)にある、こぢんまりした店だ。あたりには、機械工場、薬物依存患者の更生施設、刑務所出所者の社会復帰支援施設などが集まり、川岸には倉庫が立ち並んでいる。 (p.45)
<ル・プチ・ザンクの事例のポイント>
・デトロイトにはパリ流の本格コーヒーや食事を楽しめる場所がなかった。
・人材は買い手市場なので、抜きん出た優秀な人材を雇うことができた。
・生活コストが低く、ビジネスも少ない費用で挑戦できた。
・仲間の情熱に火をつける事業戦略があった。
(1)帳簿をスタッフ全員にガラス張りにして、経営状態を掴めるようにした。
(2)持ち場を細かく決めず、誰もがホールも皿洗いも、状況を見て手伝うようにした。
(3)創業者も含め、全員が同じ報酬。
・希望の光が渇望されているから、互いの成功を望み、競争相手にさえ成功してほしいと思っている。
(前略)開店に備えて改装にとりかかったところ、何件ものレストランが、店が軌道に乗るようにと協力を申し出てくれた。(中略)ブランチャードが経営する小さなクレープ屋(中略)は、町でただ一軒、(中略)正面から競合する。ところが、彼女は身構えるどころか、(中略)クレープのレシピを見直す手伝いをしてくれた。 (pp.53-54)
古き産業都市と限界集落
フォード、GM、クライスラー、「ビッグ3」と呼ばれた大企業と共に繁栄したデトロイト。ピーク時の人口は180万人という大きな都市です。
それが近年では半数以下の70万人まで減っていて、規模は違いますが、その状況は地方の限界集落に通じるところがあるように感じます。
産業の崩壊、人口流出、高い貧困率、治安の悪化
多くの人が、我先にと競うように町を出て行く。
こんな状況でも町に残る人は、町を愛し、町をどうにかしたいと思う人。そんな想いのある人たちだから、町でチャレンジする人であれば、それがたとえ競合相手でも協力し、成功を心から望む。
人は大変な状況に追い詰められると、自然と協力しようとするようにできているのかもしれません。協力して厳しい状況下で生き残ろうとする、動物の本能みたいなものがあるのかも。
そこでは発想が変わるし、大胆なチャレンジができるし、変化を受け入れられる。
逆に言うと、余裕があるうちは、それまで慣れ親しんできた価値観をなかなか捨てられないのかなと思います。
日本の地方も、「限界集落」と呼ばれるぐらい追い詰められてからが、本当のチャンスなのかもしれません。
それまでのしがらみ、慣れ親しんだ価値観を捨て、変化を受け入れられるようになってからが本当のスタート。
その土地を愛する人がチャレンジをして、その土地の人が協力して心から応援する。そうやって新しいことが生まれる風土ができあがったら、都会も田舎も関係なく魅力的な土地になって活性化していくのではないでしょうか。
変なしがらみや足の引っ張り合いがあるのは、まだ余裕のある証拠。そこはどん底じゃないから、まだ落ちていく可能性があります。ご注意を!
(参考文献)
『スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―』John Gerzema、Michael D’Antonio