アンジェラ・ダックワース著『やり抜く力』(ダイヤモンド社)
この本の第1章(「やり抜く力」の秘密)に米国陸軍士官学校(通称ウェストポイント)の話がありました。
知らない情報が多かったのでシェアメモです。
かい摘みます。
米国陸軍士官学校の厳格な入学審査
その入学審査の厳格さは、最難関大学にひけを取らず、大学進学適性試験で高得点を獲得し、なおかつ高校の成績も抜群に優秀でなければならない。 (p.14)
「米国陸軍士官学校を目指すには」
・高校2年生のうちから志願する必要がある
・連邦議会議員や上院議員、もしくはアメリカ副大統領の推薦状が必要
・高校の成績が優秀
・大学進学適性試験で高得点
・体力測定の各項目で高得点
これならハーバード大学に入るほうがラクにさえ思えるほどだ。 (p.14)
※本の著者紹介によると、アンジェラ・ダックワースはハーバード大学を優秀な成績で卒業している。
「米国陸軍士官学校の選抜過程」
毎年14,000人以上の高2が志願
↓
入学要件の推薦状獲得で4,000人に絞られる
↓
学力、体力の厳格な基準をクリアする2,500人
↓
最終的に入学を許可されるのが1,200人
(前略)入学を果たす生徒たちは、男女ともにほぼ例外なく、各高校を体表するスポーツ選手であり、大半はチームのキャプテンを務めている。 (p.15)
士官候補生の5人に1人は中退
厳格な入学審査をクリアした士官候補生だが、その5人に1人が中退してしまう。
しかも、そのほとんどが、入学直後に行われる『ビースト・バラックス(通称ビースト)』という7週間の厳しい基礎訓練に耐えきれず辞める。
(前略)士官候補生に配布されるハンドブックには、「ビースト」についてこう書かれている。
「ウェストポイントでの4年間で、肉体的、精神的にもっとも過酷な訓練であり、諸君が士官候補生から兵士へと変身を遂げるためにおおいに役立つ」 (p.15)
「ビースト・バラックス」
・毎朝5時起床
・授業と訓練が一日中続く
・22時に消灯
・休日なし
・食事時間以外の休憩もなし
・家族を含め、外部との接触は許されない
「ビースト」について、士官候補生の声。
「とにかくありとあらゆる面で、これでもかというほど試練が与えられます。訓練は想像を絶する過酷さで、(中略)精神的にも肉体的にも、ギリギリの状態に追い込まれます。そうすると弱点がさらけだされる。そこがポイントです。ウェストポイントは鍛錬の場なのです」 (pp.16-17)
高校2年生のときからコミットして、厳しい入学審査もクリアしてきた選りすぐりの努力家である士官候補生。
その士官候補生たちでも、5人に1人が耐えきれず辞めてしまうという厳しい訓練。
そんな過酷な訓練を耐え抜ける人はどういう人なのか。
そんな導入から始まるお話なのですが。
今回はひとまず、ここまで。
この続きは、また次回。
エリート育成に威圧は必要ない
ウェストポイントについては、この記事もすごく興味深かったのでシェアしときます。
日経ビジネス『米陸軍初の日本人教官が伝授、スーパーエリートの育て方』
特に意外で刺さったところを引用。
軍隊というと、鬼軍曹がどなりちらしているイメージがあるかもしれませんが、実は2年間、キャンパス内でも演習場でも怒鳴り声を聞いた記憶はほとんどありません。
「軍隊=鬼教官=怒鳴り散らす」イメージありますよね。
エリートを育てるのに、威圧は必要ないのです。学生が訓練で判断を誤れば、いったん訓練を止めて議論・指導します。あえて指導しないこともあります。
学生はリーダーになる人間として、自分で考え、自律的に行動することが求められます。怒鳴らないと行動できないような学生は、そもそもリーダーになる素養がないのです。
確かに、怒鳴られながら、言われるがまま行動していても、「自分で考え、自律的に行動する」力は身に付かず、リーダー育成にはならないのかもしれないですね。
逆に、究極の指示待ちになってしまいそう。
それにしても、怒鳴り散らしたりして威圧することなしに、肉体的・精神的にギリギリの状態に追い込まれるって、どんな過酷さなんでしょうね。
「想像を絶する」という言葉どおり、本当に想像できる範囲を超えて、全然イメージできません。
また、高校2年で志願して、そこを目指すアメリカの高校生のマインドもすごいなーと思います。
自分の高2の頃を振り返ると、考えられません。
まさに、想像を絶しちゃってます。
(参考文献)
『やり抜く力 GRIT(グリット)』Angela Duckworth