コラム クラクラ編集部

「共感を呼ぶビジネスが地域の未来を創る」大室悦賀(京都産業大学教授)基調講演

ローカル・ビジネス・サミット


2016年10月7日(金)、熊本県水俣市で開催された「ローカル・ビジネス・サミット 2016 in 水俣」に参加してきました。

その冒頭では、「共感を呼ぶビジネスが地域の未来を創る!〜ソーシャル・イノベーションを生みだすビジネスは?〜」と題して、京都産業大学経営学部教授で、京都市ソーシャル・イノベーション研究所所長でもある大室悦賀さんによる基調講演がありました。

地域活性化のヒントとなるような興味深いお話でしたので、例のごとく、その内容をメモベースでざっくりシェアします。

インパクトある「ノミ」の映像からの導入


  今までの考え方を「ずらす」

グラスの中で無数のノミが動いている実験映像

そのまま3日間、グラスの中に入れたままにし、その後グラスをどける。

グラスをどけても無数のノミはそのグラスの範囲でしか飛ばなくなる(無数のノミが飛ぶ形がグラスの形になって、まだそこにグラスがあるかのように、その形状を維持したまま動く状態になる)。

人の思考も癖があったり、成功体験やフレームワークに当てはめてパターン化したり、この見えないグラスのようなものがあって、その中でしか考えないようになっているのではないか

このグラスの形でしか飛ばなくなったノミは、隣に高く飛んでいるノミを置くと、また高く飛べるようになるらしい。

人ももっと高く飛べることを知れば、凝り固まった思考を捨てて新たな発想で取り組むことができるのではないか。
そのもっと高く飛べることを教えてくれるのは、「よそ者、わか者、ばか者」なのではないか

  社会的課題を生む「過度の効率性」と「2項対立」

・効率性は重要だが、効率性のみでは社会的課題は解決しない。

・効率を重視すれば、個人や地域の個性を失っていく。マニュアル化。

・人を活かそうとすれば、マニュアル化ではない手法で組織をガバナンスすることが必要。

・効率性を重視し、経済を追えば東京モデルになっていく。

・地域は個性を失い、ミニ東京が多数存在するようになる。その結果、規模では絶対に敵わないので、東京に吸い上げられる。

・「経済か社会か」、「経済か環境か」、「効率化か非効率化か」。こういう2項対立を避けるのが『Good Company』。白か黒かではなく、第三のパラダイム、グレーが必要。

サステイナブル・カンパニー(Good Company)とは


  持続可能なビジネス(行政・地域)とは

グッドカンパニー(持続可能なビジネス)とは、多様な利害関係者の対立を最小化し、社会的課題の発生を抑制し、同時に社会的課題を解決し、未来を構築するビジネススタイル。

グッドカンパニーの要件

以下の4要素を反映した商品。

①経営理念(創造した未来(ヴィジョン)と目的)
②イノベーション
③プラットフォーム型経営(多様な利害関係者の参加)
④アメーバ型組織構造(末端の人が意思決定を行う)

イノベーションを創出する組織

◎ 経営哲学(これが最重要)
◎ マルチステイクホルダーへの配慮
◯ 自己組織化
◯ 関係性(どういうプロセスで結果が出ているか)
◯ ソーシャル・イノベーション
・ 開かれた組織
・ 俯瞰力
・ 解釈的枠組み
・ 資源動員と参加

  開かれた組織について

・組織内の多様性の確保
→ これがないと、社会の変化に対応できない

・創造的摩擦
→ 異なったアイデンティティを持つ人同士の議論

・資源動員
→ 外部の多様な知的資源が参加する動機付けが重要
→ 正当性(その組織がそこに本当に必要なのか)

  コラボレーションについて

・コラボレーションは手段。手段の目的化が起こりがちなので回避しないといけない。
・多様性がイノベーションを創出する。常に多様なアクターの存在がコラボレーションには必要不可欠。

  民間組織を活かすには

・行政の基本システムは公平、画一的。これは仕方ないので、最大限生かす方法を考える。
・縦割りは効率的な運営の手法。新しいものを生む仕組みではない。過去の成功事例、他市の例を参考に政策が組み立てられる。
・新しいことは市民ニーズにマッチするか不確実。
・同時多発的に社会実験を繰り返し、その中から基本システムに合う事業を政策として取り込む。小さなテストを民間にお願いして、全体でできそうなら行政が応用する。

  アクセル(アクセラレーター)としての自治体

良い企業を育てる

・邪魔をしない
・産業政策を見直す(補助金支援の見直し)
・ネットワークは結果(上手くいくからできる)
・よちよち歩きの起業家を行政のイベントに利用しない(もてはやすと勘違いして、大成しない)

黒子に徹する

・開かれた地域社会、多様性を育む地域の構築に貢献する
・政策は常に実験してから施行する

リーダーが意思決定をしない経営


  アメーバ型組織構造の特徴

①逆ピラミッド型の組織構造

→ 意志決定が末端のユニットにある

②経営者・リーダーの役割

→ 経営理念を伝えること
→ 意思決定をサポートするためのコミュニケーションを図ること
→ 責任を取ること

③個々人の役割

→ 自立すること(生き方を持つこと)
→ 生き方と働き方を一致させること

アメーバ型組織構造では、末端の人がのびのび楽しく働けるかが重要。
経営者は意思決定をせず、責任だけを取る。それを可能にするために、自分の考え方(経営理念)を伝えるコミュニケーションを図る。考え方、価値観を共有できていれば、自ずとリーダーの意思決定に近い意思決定となる。

  リーダーに重要な視点

・感情と共に、欲をマネジメントする。
→ 欲をマネジメントできると、違いを認められるようになり、多様性が担保される。それがイノベーションの源泉となる。

・選択の前提を疑う。
→ ノミの実験の例を思い出す。

地方創生に貢献する事例


  中村ブレイス株式会社(島根県石見銀山)

・雇用を作り出している。

・古民家を再生し、移住者の受け入れと、子ども一人当たり家賃が5,000円引かれる。

・社員の増加とともに、多くの若者が移住している。

・出生数が20年前の水準に戻っている。

古民家再生活動について(中村ブレイス株式会社のHPより引用)

(前略)世界遺産石見銀山の町、大田市大森町は、古い町並みが残る約200世帯、人口400人の小さな町です。(中略)社長の中村が、大森にUターンした1974年頃はゴーストタウンと化していました。(中略)この町は大航海時代に銀を求めて世界中の人々が訪れた場所だった。この町を再び世界に誇れる町にしたい。大森で起業した時、中村はそう決意し、その想いを胸に社業の成長とともに古民家の再生を始めました。その後も行政・金融機関の補助は一切受けず、全て自力で古民家を買い取り再生していきました。当社はこれまでに約50軒の建物を修復してきました。(中略)そのうち20軒には住居として社員とその家族など約70人が住んでくれています。社員を中心にU・Iターンの住民が増え、人口減少に歯止めが掛かり始めました。

  おぢかアイランドツーリズム(長崎県小値賀島)

・雇用を作り出している

・観光産業の創出(2万人が訪れる)

・古民家を再生し不足していた宿泊施設を整備

・人口2,500人のうち100人がIターン

・全国平均より20代の人口の割合が多い

・人口減少率が0%に近づいている

おぢかアイランドツーリズムについて
(事業構想オンライン『おぢかアイランドツーリズム 2万人が訪れる「もてなしの島」』)

  地方創生に貢献するビジネスの特徴

・社会的課題を解決する企業

・働きたくなる企業

・地域の特性を持続発展させる企業

生き方と働き方を一致させ、社員がいきいきと働く企業社会的課題を解決し、社会的課題の発生を抑制する企業地域の特性を活かし、それを持続発展させる企業そんな企業で多くの人は働きたいと感じ、そこで働きたいと思えば、人口は増える。「Good Company」が地域活性化の鍵となる