コラム インタビュー

お寺deコラボするプロ「香福寺 清水谷勇哲」インタビュー

香福寺

熊本人物キュレーション<番外編>


熊本の気になる取り組みの仕掛け人のルーツを紹介し、始めたきっかけ、取り組みへの想いを紐解きます。

今回は、「お寺de落語」を開催されている香福寺の副住職、清水谷勇哲さんにお話を伺いました。

抵抗があった寺の道


学生時代はずっと熊本で、大学まで熊本にいました。それから、就職で東京に行きました。

家を継ぐ宿命というか、最初は継がれる予定ではなかったんですか。

実は、それを嫌がって東京に出たところがあるんですよ。

最初は継がれることに抵抗があったんですね。

昔からありましたね。昔は本殿も今の3倍ぐらい大きさがあって。毎朝、早く起きて掃除だからですね。大きな木が何本かあって、葉っぱが落ちるんですけど。砂利だからほうきで掃わけないので、それを全部、手で取っていたんですよ。だから凄まじく大変で、子どもの頃から嫌でしたね。

東京ではどういったお仕事をされていたのですか。

東京では工業系の商社で営業をしていました。それから一度は熊本に戻ろうとしたこともあったんですけど、色々ありまして、結局は関東に7年くらいいました。そして、家を継ぐために熊本に戻ってきました。

お寺を継がれるにあたって、何か準備をしたりされたんですか。

京都に仏教の勉強をする専門学校みたいなところがあるんですよ。寮に入って、朝から晩まで一応、管理されているみたいな生活をして。それから熊本に戻りました。

修行みたいな感じですか。

修行という感じでもないですけど。毎朝、早く起きて掃除をして、お勤めをして。仏教の学問と実践と両方やっていくみたいな感じですね。

それはどれくらいの期間ですか。

そこにいたのは1年ですね。1年で帰ってこいと言われたので。もうちょっと京都にいたかったですけどね。16歳から70代の方まで、一緒の寮に入って、集団生活をしながら勉強していたので面白かったんですよね。

お仕事をリタイヤされて、仏教を学ばれたいというような方もいるんですね。

そんな方もいるし、パートナーを亡くされてくる方もいるし。親から強制的に入れられた人もいます。バリエーション豊かで、色んな職業の人が来ていました。もともと会社員なんだけど、彼女の実家が寺だから来ましたという人もいましたね。

もともと継がれるのに抵抗があって。どこからその意識が変わったと思われますか。

学校に行ってから変わったというのはあるかもしれないですね。今でも覚えているんですけど、入学式の時に、学院長が挨拶の中で「卒業するときに、君たちは愚かになって卒業しなさい」と言ったんですよ。その時は「何を言ってるんだ、この人」と思っていて、その真意は後々、分かるんですけど。

「愚かになれ」ですか。

要は、頭でっかちになり過ぎていると。人間がですね。何か分かっているようなつもりになっているのが一番危険だし、それは謙虚さや素直さをなくしてしまうんですね。他の意見を取り入れなくなって、独善的になるし傲慢になるし人は見下すし。それが苦しみや争いや、色んなものを生み出していきます。

自分で何でもできると思ってしまうんですね。

仏教では、どこまでやれば「悟り」のような境地に辿り着けるのだろうと、限界まで自身を肉体的、精神的に追い込み、求めていくというのを、昔からやっていたもんですから。でも結局は、そこで何度も挫折して。それで自分の足りなさとか、愚かさとかを知るんですね。そうしたときに、すっと入っていくものが沢山ある。だから、そういう状態を作っていくと。
その学校で学んでいく中で、そうした色々な話を聞いて、面白いなと思って。それで、もっと学びたいなと思うようになっていったのがきっかけかもしれません。

お寺は公民館であり、実験の場


「お寺de落語」はどういった経緯で始まったんですか。

もともとは、「寺活」といって、毎週日曜日の朝6時半に集まって、一緒にお経をあげてお参りして、法話という仏教の話を10分くらいして。ヨガのインストラクターの友人が30分ぐらいヨガをやって。集まった人たちの得意分野を教え合うという活動をやっていたり。あとは「インプロ」という即興の演劇のワークショップをしたりしていたんです。その活動の中で、そこに来ていた坪井でシェアハウスをやっている中村君から、「日本酒と落語の会」というのをやっていると聞いて。そこに行って、落語を聞いてみたら面白かったんですよね。あとは、江戸の落語は仏教の法話説法から発展していったという話もあって。

そんな仏教の法話とつながりがあるということで、もともと落語に興味を持たれていたんですか。

いや、全く知らなくて。「え、落語って、笑点でしょ?」みたいなレベルでしたよ。
それで、寺というのは演芸場として使われたこともあったんですよね。舞台があって、仏教の中では、踊りやら歌やら楽器もやるので。あとは相撲とかも、「勧進相撲」といって、昔は寺の境内でやっていたそうです。だから、今の寺でも、もっと色々なことをやって良いよねと思って。それで、落語をやることになりました。それから1、2ヶ月で、高座が必要だから作り方を調べて、道具もハンズマンで板を買ってきて。それで初回が、2年前の2014年517日に「第一回お寺de落語」というタイトルで開催されました。

そういった色んな活動は本業とは別に、「面白いから」という理由でやっている感じなんですか。

基本的には自分が面白いからですね。でも、生きる力を育てるということが仏教の役割の一つだと思っています。そのツールとして、全てをやっていたという感じですかね。今の落語もそうですけど。

本業のお寺のほうは、どういった生活リズムなんですか。

基本的に休みはないです。毎日朝から掃除をして、お参りをして、出かけていって。基本は外でお参りをするので、ご自宅ご自宅に伺って、毎月の月命日というのでお参りをするというのが基本ですね。その途中で、法事が入ったり、葬儀が入ったりという感じです。今は、寺は亡くなったときというイメージかもしれませんが、もともとは、人生の色んなステージで関わっていた場所だし、関わってほしいんです。生まれたときに「初参式」という初参りで、赤ちゃんと一緒にお参りをして手形を取ったり。あとは、名付けも、寺でつけるのは、今でもよくあると思います。結婚式もやるし。合コンも、寺が発祥という話もあります。結局、村単位で、法話会、説法の会が毎月あって。若い人たちが料理とか手伝ったりして。

お寺での行事が出会いのきっかけになっていた。
昔の村社会では、お寺は身近な場所だったんですね。

そうです、公民館ですよね。お茶を飲みながら相談事を受けたりとか。お寺に集まって、お祭りとか色んな行事をしたりとか。距離がものすごく近かったと思いますね。

それと比べると、今は、敷居が高くなっている感じがします。

昔は、ある意味、何でも屋みたいなところがあったんですけど、今はやることを奪われていった感じかもしれないですね。社会が分業化していって。だから、これからの時代に合った新しい形で、寺の活躍できる場であったり、役目だったりを模索しているのが、今かなと思います。

今後も時代に合ったお寺を模索する新しいチャレンジが企画されているのでしょうか。

落語だけじゃなくて、今年は4月から「おたがいさま食堂くまもと」という、地域の人たちがみんなで食卓を作り囲んで食べるというスタイルの食堂がスタートしました。また、今度は7月に元歌舞伎役者の人とワークショップをします。それから、映画に詳しい友人がいるので、「お寺deシネマ」というタイトルで映画をやりたいなと思っています。その彼が映画に対する視点がすごい面白いので。哲学的な視点で映画を見ると言うか。そして、そこに僕の仏教の法話も交えながら、色々な世代が集まって、いろんな話ができたら良いなと思います。

昔、お寺が持っていた公民館のような役割。いろんな人が集まる場であったり、いろんなきっかけになるような場に回帰するような感じもしますね。

それプラス、実験場みたいなことをしたいですね。もっといろんな生き方とか考え方とかがあるじゃないと。それを交換し合うのがとても大事だと思います。それで一緒に何かを作り上げていく仲間ができたりとか、新しい発想や価値観、生き方が生まれたりとか。落語も歌舞伎も映画も、そのツールなので。いろんな切り口でやっていけたら良いなと、妄想しているところでございます。

実績や経験が乏しくても挑戦できる「実験場」という意味では、例えば、学生さんが、「地域のために、こんなことをやりたい」という想いだけで、何か企画してトライする場にしても面白いかもしれませんね。

今やっている活動の中でも、例えば、それを映像で撮って編集して、CMみたいなものを作ったりとか。ウェブとかのデザインをどうするかとか。そういったことを将来やりたい学生さんの実験の場になると良いなと思います。もちろん、いろんな企画をしてガンガンやってくれる人でも良いし、ちょっと興味があって気軽に携わってみたいという人でも良いし。「こういうこと、できないかな」とかあれば、気軽に相談に来てくれたら嬉しいですね。

今後も、お寺とコラボする「お寺de◯◯」コミュニティが広がっていくことを期待しています。

以前から、大人のための寺子屋と子どものための寺子屋という形で、ICT(情報通信技術)を使いながら、現代版の寺子屋をやりたいなと考えていたり、これからも、沢山やりたいことが出てくると思います。一人でやれることは限られていますし、独り善がりにならないように、色々な方と一緒にコミュニティを作りながら、やっていければ良いなと思っています。そして、寺や仏教をもっと皆さんの人生に活用していただければ嬉しいです。

お寺de落語
http://otera-de-rakugo.com/
https://www.facebook.com/oteraderakugo/

おたがいさま食堂くまもと
https://otagaisamakumamoto.amebaownd.com/
https://www.facebook.com/dekitasiko/