コラム インタビュー

新事業創出のプロ「古家達也」インタビュー(前編)

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古家達也さん
photo:古家さんより提供していただきました

熊本人物キュレーション<ビジネス編>


熊本の起業家、事業者、フリーランサーのルーツを紹介し、独立のきっかけ、ビジネスへの想いを紐解きます。

今回は新事業創出のプロフェッショナル『株式会社フィールドワークス知的資産経営研究所』代表取締役の古家達也さんにお話を伺いました。

TEDのプレゼンとの出会いで独立


もともと、生まれ育ったところが、上通で70年続く、布団の製造業をやっていて、社長業をずっと見てきました。だから、将来は何となく、社長にはなりたいなと思っていたと思います。
高校くらいからオシャレに気を使うようになって、海外のものを日本に入れる貿易にとても興味を持って、大学受験は貿易学科を目指しました。でも、そこに落ちて、熊本学園大学の商学部商学科に行くことになりました。

図らずも経営を勉強されることになるのですね。
知財に興味も持たれるのは何かキッカケがあったのですか。

大学のときに家業の布団屋さんでアルバイトをしていました。それが、企画と知的財産部門担当のような仕事でした。枕、お布団を頭の中で妄想して新しく開発して。それを権利書として起こして、特許庁に出願手続きをして登録になって。登録になった後は、権利を遊ばせておくのではなくて、活用するために使ってくれるところを探して。

布団の製造業でも自社では作らないものもあるのですね。

もとは布団の製造販売をやっていたんですけど、ある時から小売専門店になったんです。でも、作っている時代を知っている僕の父からすると、新しいものを作りたいという想いはずっとあったみたいで。でも、作る設備はないから、誰かに作ってもらわなければならない。だから、権利を持って作ってくれるところを探すわけです。それで実際に考えた枕とかが量産されて作られるようになって、それが一つ売れたら100円とか入ってきて。これは、すごい面白いなと思いました。
それで大学二年からダブルスクールで、弁理士資格の専門学校に二年間行って勉強を始めました。

大学卒業後はどういった道に進まれたのですか。

卒業後は法律事務所で務めました。僕が大学を卒業した当時は、知的財産を扱う法律事務所が熊本に二つしかなかったんですけど、その内の一つに入って、そういったお手伝いをしていました。そして、その法律事務所に務めているときに、熊本大学が国立大学から国立大学法人になるタイミングを迎えて、これから新しいことをやっていくために知的財産本部というものが立ち上がるということでした。そこで、熊本で知財関係の仕事ができる人がいないだろうかということで声が掛かかりました。

知財を扱う事務所が熊本に二つしかないし、若い人でそういった仕事ができる人は貴重だったのでしょうね。
熊大では主にどういった役割を担われていたのですか。

産学官連携コーディネーターと言って、まず、大学の先生から新しいことを思いついたよと電話があります。それで先生のところに行って、詳しいお話を伺います。そしてそれが特許になるかどうか調査をして、特許になるということであれば特許事務所に繋いで、弁理士の先生に権利書を書いてもらいます。それで、できあがった権利を企業の方に使っていただいて、それをベースに研究費を頂いて、また次の新しいアイデア開発に繋げていくという、このサイクルを回していく。そのようなことをやっていました。

研究者、大学と、特許事務所や企業との間に入って繋ぐというようなことですね。

熊大では色々な先生の技術を見ていたんですけど、その中で一番大変だったのがマグネシウムでした。

「KUMADAIマグネシウム」ですね。

あのマグネシウムだけで、特許が140くらいあって、それを全部担当していたんですよ。その140の中には、熊本大学が一人で考えたものもあれば、色んなメーカーと開発したようなものもあって。競合のメーカーとそれぞれ開発しているものがあると喧嘩しちゃいますよね。それを喧嘩しないようにルールを作ったりとか、そういうのをずっとやっていました。
そうしたら、KUMADAIマグネシウム合金が、国が25億円かけて実用化をするという国の事業に変わったんですよ。それで国の事業になると、それ専門で営業ができる人が必要ということで、そこに引っ張ってもらって。特許を見ながら、マグネシウムの棒を持って、色んなところに「これ使ってください」と言って売りさるく。そんなことをやっていました。

そして、その後、独立されることになるわけですか。

いえ、その後にもう一つ。特許庁が全国に特許に関する無料相談窓口という場所を置いていて、熊本は東町の産業技術センターにあるんですけど、そこに相談員として引っ張られていくわけなんですが、そこにいる間に独立したんですよ。

独立は何かキッカケがあるんですか。

独立を決めたキッカケがとても鮮烈で。たまたま車でTEDを観ていたら、Mick Ebelingさんのプレゼン(ミック・エベリング「閉じ込め症候群のアーティストを解き放った発明」)をやっていて。この人がやっていることが、僕がやりたいこととすごく合致していて。それを観てからすぐ立ち上げたんですよ。だから、「会社をやるんだけど、それでも良ければ」ということで、相談員として働かせてもらったんです。

観てすぐ行動に移されたというのが素晴らしいですね。

だから、それから「株式会社の作り方」という本を買って、準備を始めたんですよね。最初は相談員をしながら、週末起業家のようにしてやっていて。そのあとに、新都心プラザの創業支援室に入って、そこから本格的にスタートしました。

知的資産経営とシェアオフィスとのつながり


創業二年目には、今日お邪魔している「シェアオフィスyard」もオープンしていますね。

大学、マグネシウムの実用化、相談窓口。これらを通して感じていたことがあって。特許という権利の分野だけでは、人の役に立たないという気がしたんですよ。権利を取っても、形になって売られているのを見ていない。何のために権利を取っているんだろう。そんなことを感じていて。

形になって人の手に届くところを見届けられないと、「人の役に立っている」と実感しづらいかもしれないですね。

頭の中のアイデアが実際に人の手に届くまでが、想像以上に距離が長かった。やらないといけないことが、とても多かった。例えば、大学だったら、手に届くまでの「長い道のり」の入口の部分だけやって。マグネシウムの実用化だったら、その次のちょっとの部分だけやって。逆に、相談窓口では、経営者の人がこの「長い道のり」の出口の部分でウロウロしているような感じが多くて。この「長い道のり」が、上手く繋がっていないんだなというのが分かってきて。「これを誰か繋げれば良いのに」って、ずっと思っていたんですよ。

そうしたらTEDのプレゼンと出会った。

そうです。TEDでは二つキーワードがあって。「今やらなければ、いつやる?」という言葉と、「あなたがやらなければ、誰がやる?」ということで、僕は勝手に他力本願で「これ、誰かやれば良いのに」とずっと思っていたけど、「そっか、自分でやっちゃえば良いんだ」という発想に変わって。それで会社を立ち上げました。
でも、アイデアが形になって人の手に届くまでの「長い道のり」を辿り着くまでには、僕一人ではできないわけですよ。だから、この「長い道のり」を色んな専門の人たちと一緒にやっていきますというのを、会社を立ち上げるときの一つの柱にしたんです。

大学でそういうコーディネートをやっていたから思いつく発想ですね。

これは良いビジネスモデルができたと思っていたんだけど、キャスティングして一緒に仕事をやっていくと、電話だけでやり取りしていても、あまり良くなくて。実際に一緒に仕事をしていると、機能的に成果が出始めるということが分かってきて。
それで、異業種の専門家の人たちが、同じ場所で、集まって仕事をする場ということで、yardが立ち上がったんです。

フィールドワークスの事業をやる中で、オンラインではなく物理的に集まってやったほうが、成果が出ると分かられて、それに合わせる形でyardができたわけですね。
シェアオフィス事業を始めたことで生まれるシナジーを感じられますか。

あると思います。yardに入居している方たちは何かしらの専門家ですので、スキルと経験値が高くて、クライアントさんを多く持っていらっしゃいます。それで、自分のところだけではクリアできないようなものを共有することで、持っているクライアントさんへのサービスの付加価値を上げることができます。

色んな専門家の知恵を借りられるので、提供できる付加価値を高められるわけですね。
yardは、今後も専門家を探されていく予定なのでしょうか。

今ぐらいの規模感でやっていきたいと思っています。もう面白いキャラクターが揃っているので、このメンバーたちに長く快適にいてもらえるようにすることを中心に考えています。

(後編へ続く)

(後編)『ハキ放題、誕生の裏側』

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聞き上手のプロフェッショナル
クラクラ 編集部 (Who Cares/メディア)
「インタビューは、私たちなりの人への投資です。」

熊本でビジネスや地域活動に挑戦する人にスポットを当て、その生き方や取り組みへの想いを紹介します。熊本で頑張っている人を応援すること、その生き方に触発されて新たな挑戦をする人が増えていくこと、総じて熊本がもっと面白くなっていくことを目標にしています。
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