コラム クラクラ編集部

第5回地域づくり交流会「地域の未来を担う教育の場づくり-地域づくりと高校生-」

熊大工学部百周年記念館


2016年3月23日(水)に熊本大学工学部百周年記念館で行われた熊大政創研主催のイベント「第5回地域づくり交流会」に参加してきました。

頂いたパンフレットに「熊本大学政策創造研究教育センターって何をするところ?」というものがあったので、そこから熊大の政創研について引用しておきます。

平成19年4月、熊本大学は、大学と地域社会をつなぐ「政策創造研究センター」と「生涯学習教育研究センター」の機能をより強化するため、新たに『政策創造研究教育センター』(政策創造研究部門/生涯学習教育部門)として統合しました。
センターでは、熊本大学の研究や教育の成果を活用して、地域のさまざまな課題を解決するための研究や技術開発を行い、提案、実施しています。
例えば、自治体経営や地域政策の検討、地域の活性化、防災、都市計画、公共交通、健康福祉対策、環境保全、産業振興など多岐にわたります。

熊大の研究成果を地域社会へ還元するために、色んな取り組みがあるようです。
詳しくは、政策創造研究教育センターHPをご覧ください。

今回のイベントでは、地域づくりの成功例として有名な、島根県海士町で活躍される岩本悠さんと濱中香理さんをお招きして、お二人の基調講演とパネルディスカッションが行われました。

海士町の改革を成功させた4タイプの人材・役割


ここからは、このイベントで印象に残ったことをザックリとシェアしていきます。

  熊大の工学部百周年記念館が立派 

まず印象に残ったのは、今回の会場である工学部百周年記念館の立派さでした。調べてみると、熊大工学部は1997年に創立100年を迎え、工学部百周年記念館は2004年2月に完成したようです。

  島は社会の縮図 

島が面白い、注目すべき理由は、島は社会の縮図で、日本の社会傾向が顕著に出ているから。人口減少、超少子高齢化、超財政難。日本の未来を創るヒントがある。

日本も島国ですし、離島と本島の関係は、日本と世界の関係に似ているように感じます。

離島は小さな規模で社会が完結しているため、日本の社会傾向が早く顕著に出るのかもしれません。離島に注目すると、ある種の小さなタイムマシン効果を得られるかもしれないなと思いました。

「離島が最前線」説です。

 「ないものはない」はダブルミーニング

<海士町の生き様・心意気 『ないものはない』>

・なにも「ない」・・・便利なものはなくてよい
・すべて「ある」・・・人が生きていくために大切なものはすべてここにある

漫画ワンピースのジンベエの名言

失った物ばかり数えるな!! 無いものは無い!
確認せい!お前にまだ残っておるものは何じゃ!!!

最初に海士町の『ないものはない』というキャッチフレーズを知ったのは、学園大であった山内道雄町長の講演会のときでした(島根県海士町 山内道雄町長講演会「人が輝く、地域が輝く 離島からの挑戦」)。

そのときは、このワンピースの影響で、「何もない」という意味にしか聞こえませんでしたが、『ないものはない』は、「何でもある」という意味にも取れますよね。

このようにバイアスがあると片方しか見えませんが、「若者・よそ者・バカ者」が、見えていないもう片方に気付かせてくれるのかもしれません。

  人気の岩牡蠣は島では邪魔者だった

もともと海士町では、岩牡蠣はその辺にあって、地元では価値が低く邪魔者扱いされていたそうです。

そこにIターンでやってきた人の「都会では、オイスターバーというものがある」との情報から商品化し、近場の市場ではなく、首都圏向けに築地市場へ出荷してみたところ大ヒットしたそうです。

隠岐海士の「いわがき春香」というブランドで、オイスターバーでも人気のようです。

  高校の存続は、地域の存続に直結する

田舎は大学が少ない、島根県は2つだけ。だから高校が地域の最高学府になる。

しかしながら、高校は地域のものという意識がなく、教員・行政の当事者意識が低く、地域と高校の壁が以前は高かった。

教員は地元の人ではなく、2、 3年で移動してしまうので長期的視点を持てない。

行政は県、市町村、教育委員会のテリトリー問題がある。

まず当事者意識を持つために、県立と町だが、「県立高校は町の問題」と自分事に。島の高校存続の危機を地域創生の好機へ変えるという発想で、高校の魅力化プロジェクトを発足。

学校を地域の問題にするために、学校・行政・住民で共通ビジョンを策定。関係3町村の町村長、議長、教育長、総務課長、中学校校長、高校校長、PTA会長などを役員にした地域総がかりの推進体制を構築。

生徒が「行きたい」、保護者が「行かせたい」と思い、地域も「活かしたい」と思う、魅力ある学校づくりを目指す。

  学習×行動(町づくり)

島全体が学校、地域の人も先生。校内の座学だけでなく、校外の教材からも学ぶ。地域づくりの活動などに積極的に参加して、その中で学生も役割を担いながら実地で学ぶ。

地域の先生で足りない部分は、国内外ともつなぐクラウドでの教育コンテンツも活用。ICTを活用してグローカルに学ぶ。

  地元のことを詰め込み教育

地元の人は、地元に若者を残したいから、地元の良さを刷り込もうとする。それに嫌気が差して、「こんな田舎では地元のことばかりで、外の世界が分からない」と都会に出ていく。それをやめて、地元からでも世界と繋がれることを教える。

地域社会で子どもを育てるという理想に近い教育が、海士町ではできているのかもしれません。それは、離島のような小さなコミュニティだからこそ、他に先んじてできることかもしれません。

  改革に必要な4つのタイプ(役割)

海士町では、改革には以下の4つのタイプ・役割の人材が必要だという話をよくしているそうです。

① 風の人:改革の種(アイデア)を持ってくる人
② 土の人:芽が出る土壌を作る人(地元の理解)
③ 水の人:育てる人(Iターン者と地元をまとめる)
④ 光の人:芽が出るまで照らし続ける人

① 高校魅力化プロジェクトでは、東京都出身の教育魅力化プロデューサーが島に改革の種を運びました。

② 海士町役場の総務課長がプロジェクトの事務局長に就き、地元の理解を得ることに努めました。

③ 教育センター長は現場担当者として、Iターン者と地元との調整をしてまとめることで、プロジェクトを進めました。

④ 町長は光の人として、プロジェクトとメンバーを支援し続け、改革を成し遂げました。

この一人として欠ければ、改革は成し遂げられなかっただろうということでした。

地元が当事者意識を持つこと」、「外部からアイデアが入ること」、「トップが時には盾となり支援し続けること」。

補助金を使って、都会から来るコンサルに丸投げでは、地域は変わらないようです。

そこに住む人がプロジェクトに参画して地域を変えていかないと、補助金が無くなれば効果は消えるし、都会に住むコンサルタントはそこに住むわけではないですから、当事者不在となって、続かず広がらず終了してしまいます。

だから、そこに住む人、外部からやってくる人、その両者の間に入って調整する人、盾となり改革を守り支援する人、それぞれが改革を成し遂げるために必要なピースなのだと思います。


参考図書コーナー

海士町と岩本悠さんについて詳しく知りたい方は、岩本悠さんの著書があります。岩本さんは、なかなかの異色の経歴を持っています。大学生とかバックパッカーやりたい人にオススメの著書です。

◯『未来を変えた島の学校――隠岐島前発 ふるさと再興への挑戦』山内道雄町長らとの共著
◯『流学日記』岩本悠

 

どちらも熊本市の図書館に所蔵されていますので、もっと海士町や岩本悠さんの生き方について知りたい方は参考にどうぞ。